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王国物語1・憤怒

2008.03.21 *Fri
王国物語、一人の男の始まり。



憤怒。



彼は、叫んだ。
それは彼の大地に住まう仲間から見ればさぞ驚き目を見開いたことだろう。
彼は怒りを知らない種族。穏やかで、作ることを喜びとした種族。
多くの仲間が、大地に還った。それはすべて人間の手によって!
彼はごつごつとした荒野の中で、雄たけびをあげ続けた。

彼はノームという。ノームというのは総称で、一個体の名前ではない。
だが名もなき古の神がいた時代、彼らはノームという総称だけでよかった。
大地から生まれた精霊であり肉体を持つものを妖精という。
彼らは大地のノーム。
一人がみんなでみなが一人。彼らは更に格の高い精霊である魔族――― 北の大地を総べる銀の君とよばれる魔族に使えていた。
彼らは人の倍の体躯を持ち、巨人族と人間たちは畏怖を混ぜて呼んでいたが。細い目、四角い顔立ちをしていて、女でさえもその特徴はかわらない。いっけんこわもての彼ら巨人たちは、確かに恐ろしい人物のようであるが、彼らはおおらかで優しい種族だった。
時には木をきり、運び、あるいは岩を砕いて、街を作る。力仕事がほとんどで、その指示は細かな技巧が得意な大地の妖精であるドワーフの仕事だ。
彼らの仕事を銀の君は愛し、銀の君に代表として招かれ彼は誉れの言葉をいただいた。
無骨で臆病な彼らは力持ちであっても戦に出ることはない。そんな彼らを守護する銀の君は小さく優美な姿であるにもかかわらず、美しく、素晴らしいものをありがとうとおっしゃってくれる。戦わないことを揶揄するでもなく、あの小さな手で守ってくださるとおっしゃってくださる。
この上ない喜び!

その帰りのことだ。大地を踏み鳴らす大きな足が不意にはたと歩みを止めた。
知りえない、違和感だった。
想像もしない何かが、起きた。
彼と彼の仲間は繋がっている。彼が抱く喜びは、すでに仲間にも繋がり、彼は仲間とともに喜びに満ちていた。
その喜びが、ふいに途切れた。

最初は背を襲う謎の震えだった。次に訪れたあふれんばかりの恐怖。
そして、彼の中で彼が消えていく。恐ろしい喪失感。
彼は走った。彼の住まう大地へ。

彼がその大地を踏みしめたとき、あるのは土くればかりの荒野のみであった。
ノームは死したとき、大地に還る。土から生まれた彼らは文字通り、土と化して大地に還るのだ。
仲間の残した思念が彼を包む。

闇を振りまくおぞましい剣を掲げた、そう白い人間の騎士だった。白い騎士は次々と仲間を切った。
仲間たちは混乱し、恐怖の中叫び走りながらきられていった。
一緒に暮らしていたドワーフたちが必死で彼らを洞窟の中へと誘導したが、人間よりも小さな小人である彼らの棲家は人間もとい巨人であるノームは入れない。逃げようとした巨人族の多くが、その入り口で息絶えた。
白い騎士は笑っていた。おぞましい力に酔いしれながら笑っていた。

銀の君はここには来られない。銀の君が唯一つ苦手とするもの。それは穢れた瘴気。彼にはわかった。己の中に入り込んでくる、恐ろしいものを。
穢れた力によって死した仲間たちにより、大地は穢れて瘴気が充満していた。瘴気が彼の中に入り込み、彼らは仲間たちの恐怖とともにふつふつと力がみなぎるのを感じた。

我がこの拳で、滅ぼしてくれようぞ。

はじめて目から零れ落ちたのは、仲間が流した血の涙だった。
はじめてひざを突き、ふりおろしたこぶしは、岩を粉砕した。

許さぬ、許さぬ!!
怒りを知らぬはずのノームはその日より怒りとともに初めて性を受けた。


もとよりあるは己が怒りのみ。
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CATEGRY : 王国物語

COMMENT

No title
見てしまいましたが……。
そういえばー。誤字脱字報告はしてよろしいですか?(ぁ
2008/03/22(土) 01:57:00 | URL | 榛 #- [Edit
No title
是非してください(´`
2008/03/22(土) 07:59:46 | URL | 総 #- [Edit

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