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奇想天才・前編

2009.08.01 *Sat
普通に見られない常識人×天才過ぎた変人=コメディ

知らぬが仏ということも在るだろう。
高宮はすぐさま忘れることにした。そう、忘れるはずだった。

というのも、異様に目立つからだ。
高宮には父親がいない。母親は道に倒れたの男を拾い、男は金髪で名前を“神楽”といった。男は母親と恋人関係になったが、“子ども”の神楽を妊娠したと母が知った直後にどういうわけか姿を消して二度と現れなかった。どうして姿を消したのか、彼は何者だったのか全くわからない。ただその男の子として生まれた高宮“神楽”は金髪が地毛で、ひどく目だってしょうがないということだ。
おまけに言うと、高校にあがった今では信じられないことだが、幼いころはとても体が弱く、入退院を繰り返していた。そのために、小学校中学校時代あまり好ましくないがいじめの対象になり…素直に殴られるのは癪で殴り返していたらいつの間にか喧嘩ばかりの少年期になってしまった。無論それに比例して腕っ節は強くなってしまうし、体も丈夫になった。ついでに悪いうわさも比例して広まってしまった。目立つ容姿のため絡まれるし、返り討ちにするとまた絡まれる比率がなぜかあがってまた目立ち…いや、回想するのはよそう。とにかくろくでもない中学時代だった。
目立つとろくなことがない。そしてろくでもないことを経験したために夜間の高校に通うことにしたのだ。
夜間といっても、その授業がはじまるのは夜ではなく、夕方と呼ぶに等しい時間帯だ。そのため学校の中には部活動に勤しむ学生が多数のこってるものの、帰宅部の生徒が残るには若干時間は遅い。校舎の中の廊下を歩く高宮の視界には人はいないが、どこからかこぼれてくる生徒たちの声で人の気配を感じていた。
さて。
高宮はそのときひどく不自然なものを見た。ただの移動中、視界の中、一瞬バナナの皮をみた。基本的に校舎の中と言うのは廃れた灰色の中で目立つ存在だ。ふってわいたにしても、何故そこにあるのかと気にする以前の問題でその色彩は見事なライトイエローなわけで。目に入ればすぐさま頭から消すのは難しい。そして、高宮は見えたがいいがすでにそれに向かって一歩踏み出したところ―――高宮は視界ぎりぎりに入ったそれを見事またいだはずだった。
しかし直後、高宮は奇声を上げた。何かが足をひぱった。足が勝手に動く、そして踏む。よりにもよってバナナの皮の上に。高宮は見事にこけてなんだってんだと思わず愚痴った。周囲からは失笑が聞こえる。金髪で嫌でも目を引く容姿だから滑稽さも増大していることだろう。
なんだっていうんだ!

最近、妙なものに絡まれる。
これが自分の髪のせいだとしたら俺は見ず知らずの父親を恨みたい。
いや、別にハゲたかねぇけど。
しりもちをつきながら軽く振り返ると廊下の角からあからさまにこちらをみている女子生徒がいた。―――にやり、口をゆがめ笑っている女子生徒二人。一人は全く知らないお嬢さんと形容するような容姿でだったが―――もう一人、ぼさぼさ頭の黒髪の顔は見覚えがあった。
ほう、やってくれたな。
高宮はすぐに視線をそらしてバナナの皮を近くの教室のゴミ箱に投げ捨てた。そして同じように口の端をあげる。
俺は、やられっぱなしで気にしないフリをするほど、いいやつじゃないんだ。
にやり。

その奇妙な生き物に目をつけられ始めたと思うのは、夏休みの終わりごろだったように思う。
その日は月がでていた。高宮は屋上でその月が空を横断するのを目で追いかけて過ごしていた。ただただ見ていると忘れそうになるが、目で追うと一言言っても、神楽が身動きもせずじっと見続けた夜空の下で、左側にあった月が右側にまで移動していまったのだからそこで過ごしていた時間はわりと長かっただろう。
今日は閑古鳥がないているようで、ここを訪れるものは居ない。そういう日もある。
本来なら、夜間の学生でも22時以降は学校に居続けることはできない。だが高宮はその日の日付が変わるまで学校の屋上に居ることが許されているし、そこにいなくてはならない。高宮は学校と特待生として他の学校ではまずありえないとても非常識な条件で学校に籍を置いていた。

きれいだ。

不意に、その単語が高宮に聞こえた。いや脳裏に言葉が急に浮かんだとでも言うだろうか。高宮にとって、そういうものが聴こえることは珍しいことではない。時々、自分の心の中の声か、そうでないか区別に困るので自分が考えたことではないと思う限り、他人の声だと思うようにしている。そして今回は後者だ。
高宮は周囲を見渡すようにして振り返るとそこには知らない女子が居た。
髪の毛はぼさぼさの髪に、この学校指定の制服を着た女子生徒だった。肩につく程度のぼさぼさの髪が顔のほとんどを覆い、人相はわからない。いつからそこにたっていたのだろうか。彼女がここくるまでに出てくるだろう足音とか、人が動くときに感じる気配を一切感じなかった。見た目は人間でも、それが人間だとは限らない。
「よう」
高宮を呼び出しに来た人間じゃないのなら、ここに来たのは人間じゃない。
だから、人間じゃないと思っていた。それはまっすぐ高宮を見るとこちらに向かって駆け出してきた。そういう動きをされるのは初めてで高宮も思わず身構えるが、相手の方が動きが早く、そして想像も付かない行動を取った。いっそそれは獲物に向かって飛びつくような犬や猫を連想させる動物の的な動きだった。
鋭く伸ばされた高宮から見れば細く小さな腕が高宮の頭にのびる。ぎょっとして飛びのくより、その手がむんずっと高宮の髪を引っ張るほうが早かった。
「てっめぇ!何するんだよ!」
そう言いながらも、高宮は他のことに気をとられていた。飛び掛ってきた体が静止して降りかかる重み、つかまれた手を離そうとしてつかんだ両腕が持つ体温、頬にかかる吐息、それは生きたもの独特の感触で…彼女は生きた人間だ。
両腕がつかまれて、それはすぐにもがいた。高宮もそれにつられ手を離す。その拍子に相手と目が一瞬合った。あまりにも目が印象的で、高宮の脳裏にその目が焼きつかれる。
高宮が呆然としている間に、女子はあっという間に屋上の唯一の入り口の奥に姿を消した。
虹彩はあるが瞳孔がない生き物、というものを高宮は見たことがあった。総じてそういう生き物はどんなに顔のパーツを動かしていても表情に乏しい印象が残る。彼女も表情が乏しくて正直言うと恐ろしかった。生物的問題で目で見るためには、瞳孔が必要だ。そして色を識別するという意味では、物理的に瞳孔の色は黒じゃないといけない。
でも、瞳孔と虹彩が同色の真っ黒な目ってありえるのか?
月の光を受け入れながら、その目はきれいなガラス球のように潤いつつもただ白目の中にはまる黒目は真っ黒だった。真っ黒な目は見たことがなかった。
それともあれには瞳孔がなかったのか?あれは人間じゃないのか?
少女の動物めいた動きと底なしの色の目は高宮の背を夏だというのに凍らせた。

忘れよう。

脳裏に浮かんだ言葉は確かに高宮のものだったはずだ。だが高宮が思ったからといって、必ずしもその意思が組まれているわけでもなく、先ほどのバナナに続く。
あいつは忘れてほしくないらしい。

そう思い至ったのは、夏休み明けから始まった微妙に不幸な出来事がおき始めたからだった。
まず、昼間のバイトを終えて校庭で授業が始まるまで昼寝をしていると、どこからか空き缶が―――それも顔面に―――飛んできた。
眠っていたのでよけるまもなくヒットした。驚いて周囲を見渡すが投げてうっかりあてるような位置に人が居ない。
腑に落ちないままその時はゴミ箱に捨てることで事なきを得た。
それからしばらくして、歩いているといやな感触がして足を上げると、ガムを踏んでいた。清掃会社が毎日清掃をしている校内ではありえない代物だ。高宮個人は置いといて、この学校は品性良好な生徒ばかりのお坊ちゃん私立学校だ。ここの生徒がガムをくちゃくちゃしたあげく、ぺっと吐き出したとも思えない。不自然すぎる。でもたぶん、見る限り、水分も豊富でできたてである。
サイアク。
思わず愚痴りながら高宮はそれをきれいに剥ぎ取って処分した。
バケツに足がはめる程度の落とし穴も経験した。誰かが引っかかるといけないので他にもあった落とし穴をすべて埋め直した。
高宮は新しい体重移動の仕方をたぶん習得した。

―――気配がなくて怖いと友人に言われた。知るか。

廊下に水溜りが唐突にできていてそれをよけて通ろうとするとそれがフェイクでよけて踏み込んだ先に場所にワイヤーがありそれに引っかかりこけた。
光の反射を意識しながら歩くようになった。

―――目が殺気立ってて怖いとなじみの教師に言われた。知るか。

授業を受けようとして教室に入ろうとドアをあけたら黒板けしが落ちてきた。ドアは引き戸ではなく押したり、引いたりするドアだ。おそらくドアノブに何か仕掛けがあったんだろう。黒板消しにまきつけられた淡いワイヤーを見て高宮はそう確信した。
それから物事はワンアクション反応を待つようになった。

―――レディーファーストって柄じゃないでしょうと母親が言った。それは猪突猛進のあんたが悪い。

他にもまだあるがそれは割愛して、夏休みがあけておよそ二ヶ月弱の間にあまりにべたな悪戯を下手すると一生かけてもこんなに受ける人間なんて自分しかいないのではないだろうかとちょっと黄昏るくらいには経験した。
そう、俺は狙われている。
何せこんなに罠があっても自分以外の誰かが被害があったなどという話題をまったく聞かないからだ。数を数えるだけでもどう考えても高宮以外が引っかかってもおかしくない程度の数がある。だのに高宮が一度引っかかると同じ罠が回ってくることはなかった。しかも仕組みから見て落とし穴以降のものは人為的なのは丸わかり。
高宮自身も罠に対して耐性をもてるようになったのもある。自分を見る視線まで読めるようになってしまった。その感覚が告げている。自分が罠に近づくとき、あるいは引っかかっているとき、こちらを見ている気配が二つある。高宮が罠に引っかかりながらそれを追うと、はっきり誰だという確信がもてるまでは見ることができなかったが、それが女生徒の二人組みであること、一人は小柄で肩ぐらいの髪、一人はストレートの長髪だというのがわかった。同一人物だ。前者はあの月夜のやつだと確信していた。後者には心当たりがないが。
しかし動機がわからない。あの夜を境に目をつけられたのはわかる。わかるがなぜこんな方法なんだ?襲ってくるにしても間接的だし、かまってほしいにしても話しかければいいとおもう。なのに奴は姿は見せるようになっても、近づこうとはしてこない。
―――変人なのは確定だ。
そして個人的に高宮はあの奇妙な生き物が嫌いじゃない。やることが奇抜で想像外なことばかりなのが面白い。よく考えたもんだ。でも、高宮が気がつくようになったのに気がついている。悪戯を通して高宮と変な行動する相手と奇妙なキャッチボールが成り立とうとしている気がする。理解不能だが。理解不能だと思うとあたらな単語が浮かんだ。
これはストーキングという奴だろうか。
あんまり的を得ているので他のことがもう思いつかなくなった。なるほど変質者は理解できない。納得。
そして今日、確信を確認した。現行犯を見たのだから。後はしめる…いや掴まえるだけだ。
どうやって掴まえるかな。
席に着席して、辞書を開くと人形が飛んできた。それを冷静によけながら高宮は目を細める。

ありえねぇ、これ、厚紙の表紙じゃなくてぺらぺらのナイロンが表紙の辞書だぞ?
びっくり箱の応用なのはわかるがどういう仕組みだよ。

人形が入っていたと思しき場所がきれいにくりぬかれた辞書を見て高宮はさすがに怒った。

この辞書俺買いなおさなきゃいけないのか?冗談じゃねぇ。
教科書は学校から借りていたが、辞書は自前だった。悪戯に関して時々いらっとする程度で基本的に楽しんでいた高宮だったが自分の物が損傷するとなると話は別だ。何せ物にはお金、マネーがかかる。しかも辞書は高い。この学校が金持ち学校でものがなんでもそろうとはいえ、物の価値がわからないようなことをされるのは腹が立った。特に、私物をいじられたあげくに損傷させるのはむかつく。こんな風にくりぬかれてしまっては辞書の意味がない。イライラしながら机の中に手を入れると、そこに無事で、高宮がおそらく愛用していた辞書が入っていた。
怒りは薄れてほっとした。それは物が無事だったというよりも、悪戯を仕掛けてきた相手を本気で嫌いにならずにすんだことへの安堵の方が大きかった。

でも、やっぱりあいつはつかまえないとな。
安心すると、妙な決心が固まっていた。
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