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銀の君の花嫁3

2009.01.12 *Mon

部屋に戻されて、私のと男は立ったまま対峙する形になる。男はディ何とかと自ら名乗ったがやや耳慣れない発音と名前が長いために総てを一瞬にしてシアンは忘れてしまった。名前を覚えるのは大の苦手だ。一先ず名乗られたのでシアンも自分の名前を答え、性で呼ばれるのを遠慮した。普段は性で呼ばれるほうがいいがここで東野さんと呼ばれるのはとても、そう、とても場に合わない気がした。
閑話休題。
男は早速と切り出した。若造というほど若くもないがおじさんというほど年もとってないように見える。兎に角顔が全体的にしかめてあるのでこの人は苦労しているのだろう。いらいらというより、じりじりとしているのが雰囲気に出ている。シアンは妙にこの男へ同情した。
「貴方は何故この場所にいるのかわかりますか」
「わかりません」
「あなたはこの国のために召喚されました」
「はあ」
異世界迷い込みじゃなくて異世界召喚ですかまじですか。
まあ、出会い頭に名前を聞かれたぐらいだ。妥当なのかもしれない。少なくとも、この人達の身体能力相手だったらシアンはすぐ死にそうだ。何せ背後にふっと現れる人たちだ。怖い。
「ふむ、あなたのほうはあまり動揺していないようですね」
ぼんやりと考えに浸っていると、じりじりした男は少しだけ体の力を抜かせて言った。あなたはということは比較する相手はひどくうろたえていたのだろう。先ほど自問自答何回も繰り返しましたから。とは心の中でシアンは答えておく。
「あなたは、ということは別の誰かもいるのですか」
「あなたの隣にいた、もう一人の女性です。彼女も同様にして召喚されたのですが、彼女はあなたの知り合いではないのですね」
ああ、予想的中。
ややをおたくというか、ゲーマーというか。ファンタジー創作を好きじゃなかったら異世界迷い込み・召喚なんて単語すら出てこないだろう。同じ日本人なら柏木さんはとても気のどくな女の子である。きっとゲームなんて縁がない生活をしていたに違いない。シアンはそのことを言うつもりはなかった。声に出したら自分が不安になりそうだ。泣き叫んだりしないのは泣き叫ぶと不安がとめられなくなるのが分かっているからだ、そうしたところで現状が代わることはない。
「同じ国の出身かなとは思いましたが、知らない方です」
「そうですか」
「はい」
そして沈黙が下りた。沈黙は不安を煽るので困る、シアンは早速切り出すことにした。
「で」
男は眉をひそめた。
「ご用件は何ですか」
眉を潜めたは顔をしかめたに変わった。真っ直ぐな眼差しで男はシアンを射抜く。
「非常に極論で申しますと、今わが国は危機に瀕しています」
「それは、争いか何かで?」
思わずシアンは小首をかしげた。異世界迷い込みと言ったら戦争しかない。しかしシアンは特別頭が良いわけでもないしひいては特別強いわけでもない。戦争でよばれたらシアンは即用無しだ。使えない。
「いいえ、世界の枯渇による貧困です」
召喚のタネは世界規模、さすが。だが枯渇というのは漠然としすぎていてシアンにはどうしようもない。だが緊迫しているのはあたりかもしれない。男の状態はとても余裕がありそうもなかった。じりじりした男は、本当にじりじりした国できっとじりじり仕事をしていたのだ。
「戦争だ何だといわれたら、とても困ったのですが。これはこれで……非常に、なんと答えればいいかわからない状況なんですが」
男は答えない。たぶん相手も返す言葉がないのだろう。空気でそれで伝わる。
「ただ……何もわからないし、知らないし。おそらく私は何もできません。ないものを出せるような力のようなものは持ち合わせていないんです」
男は深く息をはいた。
「ありがとうございました。後で新しく使いのものをよこします。それまではここにいて下さい」
すぐに背を向けて立ち去ろうとするのであわててシアンはそれを止める。
「まって、待ってください。私はどうなるのですか」
「まだ正式に決まっていないので、私からは何もいえません。ですが、あなたの命は保障されると思っていてくださってけっこうです」
男は思い出したように一礼して、そして部屋から出て行った。シアンはそれをぼんやり見送ろうとして…何故か男と目があった。まだ何か?
シアンが不思議に思い、小首をかしげる前に視界が暗転する。

おい、ぼうず、ぼうず。
おっさんというにふさわしい声がする。―――ゆすられている。シアンははっと体を起こした。
「うわぁ、ここは?」
周囲は暗い。空の暗さを見出してシアンは夜だとすぐに察した。視線の先には予想通りにおっさんという形容がぴったりの男。四角い顔で、髪の色は茶色、目がエメラルドの原石を思わせるきれいな光が夜空から降りる光を受けて輝いている。人のよさそう、優しそうなものがにじみ出ているような男だ。シアンは男の目を見る。やさしそうに笑んでいるがシアンは心読めるわけじゃない。男は何で話しかけた?
「お、ぼうず、めをさましたか。こんな道端で坊主大丈夫か?」
「えーっと、すみません、ここがどこだかわからないです」
男の言葉に言った後で的はずれだなぁと思う。
「どこって、ルクセン通りの…住宅街…?」
男もひどく戸惑ったように言う。きょとんとして言うので悪い人じゃないかなとシアンはこの人は大丈夫かもしれないという希望を傾ける。こんなところで倒れこむ微妙な年頃の子供に声をかけるとしたら、警察系統か売春などの人売り斡旋業者だ。それに”今度”は異世界召喚パート2というわけではないようだ。
っは、異世界召喚。
シアンはすぐに一つのことが想像できてしまいさっと青ざめる。
まさか、まさか追い出されたんじゃないの。
あの男は嘘をついていたということ。
生活の保障なんてされてねーよこのやろうーーーーー!
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