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ロゼッタ

2008.03.18 *Tue
二人の男の話なのにいきなりヒロインに話しにぶっ飛んでみたり。

一人の女の子がその手に剣を取った理由。



「いやぁ、暇だったんですよぉ」
はじまりの記憶は、どうしてもその言葉の裏を考えたくなるような人相の、男のまのびた声からはじまる。
私は、自分の手の平の倍はあるような大きさのナイフの柄を握って、男がチョークで描いた的へと投げた。すでに的の中心に刺さったナイフの柄に、更に刺さったナイフの柄にナイフの切っ先が刺ささる。
それをみてから私はきょとんとして父を見上げるのだ。
父は驚くような、とがめるような声を上げて私の名前をよんでいた。

「別においらの見てくれは確かにこうですし、中身もそうなんですがー。別にじょうちゃんをどうこうしようとかはないんですけれどね。いや、ほんとうに。暇だったんでナイフいじってたら、じょうちゃんが興味しんしんなわけで。ナイフ投げを教えていたんすよー。いやぁ、このじょうちゃんすごいっす。」

庭木にささったナイフの連なりに父は私をみた。
「まさか、これを本当にロゼッタが?」
「できるもん。」
むっとしてしまう、父はほめてくれると思っていたからだ。

「ないふちょーだい!」
男ににじり寄ってナイフをせがむと男は困り果てたという様子でじょんそんさぁ~んと声を上げた。
男が声と目を向けた先には父のお客様だった青年がいて、青年は背が高くて、でも何だかすぐにでも倒れそうなぼんやりした人だった。
何だか返事がいつものんびりとした返事ばかりで、私はいらいらする人だった。

「ではこれはどうでしょー?」
その青年が、ご飯で使うナイフのような、でもその何倍もきれいで、鋭いものを私に渡す。私はそれを構えてまた的へ投げた。
さっき私が投げたナイフの柄に、それはまた突き刺さる。
胸が思わず踊って、わくわくしながら父を見上げた。けれども、父は驚くような気難しい顔のままで固まっていてほめてはくれなかった。

しょんぼりした気持ちを、掬い取ってくれたのは、苦手なあの青年だ。
「すごいですねぇ」
やっぱり間伸びた声なのだけれど、でも目を向けると頭をなでて笑っていた。嬉しかった。
「だよなぁ。この調子じゃぁ狩りなんかすぐマスターできそうな感じだよなー」
つなぐように男が言う。男も顔がちょっと怖いけれど、やっぱり悪い人じゃないと思った。
「まさか。それはほめすぎと言うものです、あんな幼い子にウサギなんてとても。」
父だけが私がしょんぼりすることを言う。
そんな大人たちの会話はだんだんわからないものになってきて、雰囲気だけを私は見ていた。正直言うと、退屈だった、と私は思う。
「うさぎじゃねーよ、お空の鳥さぁ~」
「鳥ですって!?」
「いや、」
のんびりした風の青年が続けた。
「やり方を覚えてしまえば、この子は覚えてしまうだろう。」
ぼんやりした人の声の断言に私は少しびくりとした。

「生まれながらの天賦の才。最近、魔族でもないのに異端なちからを秘めた子供が生まれているとの報告を聞いたことがあります。それはまさしく、神話の中でのまるで天使の生まれ変わりと。そのような子は、教会に報告され次第、塔に保護されていたきがします。この子も、天使の生まれ変わりかもしれない。」
「塔だと!ダメだッ」
父が突然怒鳴り声を上げて、私は飛び上がった。
「おとうさま?」
何で怒っているの?
でも父は私を見ていなくて、青年を見ていた。
「塔などと、あのような恐ろしい場所にロゼッタを行かせるものか。」
父は“塔”という場所を嫌がっているようだった。何故なのか、その理由を私はそのときにはわからなかった。
「塔は、ロゼッタを奪いに来るだろうか。」
「どうでしょうねぇ。なんとなーくきそうかもしれませんねぇー。」
「まぁ、じょうちゃんのことを知ったら。その塔とかいう連中じゃなくても、だれだって欲しくなるわな。今の世の中に、落ち着くとこなんザありもしねぇもんよ。」


それが、その時のすべての答えとなった。
私はジョンソンという青年から剣の扱い方を短い間教わった。周囲の見方、観察の仕方は一緒にいたじゃんという男に教わり、二人はたぶん、とても教えがよかったのだろう。まだ片手の指で年を数えていた頃なのに、私は完璧にマスターしてしまった。
さすがにそこまで小さな頃に、本物の剣は振り回せない。私が教わった時は小さな木の枝だった。それを、二人が去った後、二人の教えに従い。練習をつづけていた、木の枝は木刀へと変り、ナイフとそれは姿を変え、短剣を得て細身の剣。そして剣へと。

父は私を外に出すことを許してくれなくなった。
私のもつ力とやらを奪われないために、それが私のためだからと、父は静かに私を守った。人里はなれた屋敷での父との暮らしを嫌うわけなんてないし、別に不自由はしてなかったけれど。
ただほんのちょっと寂しかったとなんとなく思う。


けれど、その平穏な生活が不意に終わりを迎えた。
父は私の元へ、一振りの剣を差し出した。それを私にもつように言う。
「お父さま、」
驚く私に、父は知っていたよ。と笑んで見せた。
「お前が私に隠れて剣の練習をしていたことを知っているよ。散歩と称して狩りの練習をしていたことも。
いいかいロゼッタ。絶対にその剣を抜いてはいけないよ。誰かに聞かれても、もっているだけと答えるのだ。その剣をもって、ノームの下へと向かいなさい。」
「でも、お父さま。」
「いきなさい。」

お父さま、私はお父さまと一緒に、戦いたかった。

はじめて出た外、はじめて泊まった宿屋で、父の死を聞いた。

きっと、私にしか出来ないことがある。
お父さま、お父様は私を守ってくれたけれど。守られるだけが、すべてじゃないと思うの。お父様のように、私は誰かを守れると思うの。
それは私のわがままとか言うものではなくて、私だから出切ること。

剣を取り、立ち向かえ。

――― さあ、踵を上げて。
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