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銀の君の花嫁1

2009.01.09 *Fri
その世界に、二人の娘が召喚された。
北の広大な大地を支える王の妻となるために。

だが国を救うのはどちらか一人。
どちらがその選ばれた娘であるのか。

あるのは期待と、困惑。




異世界召喚なんてされた娘ッこの、愛やら友情やらのすとーりー(かも知れない


今、自分は何をしていただろう。

紫杏(しあん)は呆然と前を見た。そこには煌びやかに内装された体育館が目の前に広がっている。更に厳密に言うと足元には敷き詰められた赤い絨毯。体育館の壇上にあるのは椅子とそこに座る人間。赤い絨毯をはみ出る場所には整列された鉄の甲冑がずらりと並んでいる。ほかにも人が転々といるがどう表現すればいいかわからない。兎に角その他人。
そして隣にいるのはいまどきの女の子。金茶に染めて緩やかなパーマをかけているっぽいい髪。それに囲まれたパッチリアイメイクを施しきれいにファンデされてもちろんグロスもリップも塗ってある。顔のつくりは小顔でなかなか整ってると思う。ホワイトピンクのファーがついたダッフルコート、黒いマーメイド型のミニスカに黒い先がとがった形の黒のロングブーツを履いている、自分には見慣れた女の子だ。女の子といっても20前後だろうが。
対する自分のなんとみすぼらしいこと。のびのびのねずみ色のロングシャツにだぼだぼとしか形容するしかない緑のセーター。そしてひざやすそが切れただぼだぼの黒いカードパンツ。誰とも会わない、出かけないを前提に引きこもる服装だった。歯を磨いたし、顔も洗ったけれど、髪はといていない気がする。そう、今日は動く気もなくお茶を片手にインターネットをしていたはずだ。
目を見開いている女の子を見て冷静になった紫杏は少し冷静になって考え直した。
紫杏はインターネットをしていた。あけてついばんでいたポテトチップスは食べかけだったし友達がプレゼントしてくれた特大マグカップにはお茶が半分残っていた。部屋で温かいお茶を飲みたくて持参した水筒はまだ封を切っていなくて、椅子の上でかたひざを立てながらパソコンの画面を見ていた。今日は晴れていて暖かいから窓を開けていてエアコンをつけていない。カーテンのレース越しに見た空は青空は気分を良くさせてくれてもう少ししたら布団を干そうかなどと考えていたところだ…った。
だったはずだ。
これはもしや寝不足から来る幻覚症状だろうか。いや、夢?今まで浅い夢は何度も見てきたけれど金縛りじゃない夢は初めてだ。むしろ夢が夢だと自覚できるときは起きようと必死でいつも体がだるくなる。今は体はだるくない。普通に動かせそう。というよりも何で座っていた状態から直立しているのかわからない。やっぱり幻覚症状だろうか私はとうとうおかしくなったか。視線を落とすと自分の足が見えてきた。長いすそからちょっとはみ出している白い裸足。自分だけ裸足。夢でも幻覚でもこれはかなり恥ずかしい。
「お前たちの名前はなんと言う」
静寂をきり、男の声が前から聞こえた。深みのある悪くない声だ。
「そういう、あーただれさー」
紫杏は反射的の答えてしまってしまったと顔をしかめた。体育館の、玉座と思しき椅子に座った男が声をかけたはずだ。銀髪で、遠目に白い布で細やかな金の刺繍が施された服を着て座っている人間。眼鏡をかけても顔の詳細はわからないが声からすると男なのだろう。そしてもう一ついえることは、たぶん偉い人である。そんな相手にとても砕けた口調で話しかけてしまった。不敬だ侵入者と詰め寄られる前に逃げたいが、体育館と思えるほどに広い場所で、前方にはない出口に誰にもつかまらず走れる気がしなかった。隣に立つ女の子以外に他の人間との距離は10メートル以上ありそうだが、なんとなく逃げ切るのには自信がない距離。運動が出来ないわけじゃないけれど飛び切り出切るほうでもないし。何より周囲の空気が紫杏をなえさせてしまうほど重く沈んでいる。
頬がぴりりとするような気がしてみると女の子がシアンを凝視しているように見ていた。
「あの、ここはどこ…ですか」
小さく、控えめに抑えられた声が囁くように言う。そうだよねぇ、とシアンは心の中で相槌を打った。彼女はもしや私と同じような人だろうか、日本語も通じているし見た目もこの中で一番身近に感じる。
「わからない。私は東野紫杏(とうのしあん)。日本人なんだけど、君も日本人なんだよね?」
言って、そういえば目の前に座っているあの人も日本語をしゃべってはいたと紫杏は思ったけれど、女の子の顔がやや強張ったのをみて自分が少し語尾荒く彼女に詰問したことに気がついた。ああ、自分もつくづく冷静と思慮がない。
「は、はい。私は柏木陽菜(かしわぎひな)です。あの、何がどうなってるんでしょうか」
おそらくヒールのブーツを履いているのだろう、シアンはヒナを見上げた。ヒナはわけもわからないまま教師にしかられているような表情だ。その姿に思わずいらいらするのと不安がシアンの中でくすぶった。
「私もわからない」
私だって教えてほしいのに。
シアンがむっとしていると今度はまた周囲が動いた。今度は全体的。飾りかと思っていた甲冑が動き出して、シアンと柏木さんを囲むようにやってくる。思わずうしろに柏木さんをかばうけれど、シアンの胸は高まり頭は不安で急降下した。
警戒をしたけれど動けないでいると、後ろから柏木さんの悲鳴が聞こえた。しまった、後ろをじっくり見ていなかった。シアンは振り返って柏木さんを庇おうとしたけれど。柏木さんのうでつかんでいるのは甲冑じゃなかった。肩まで在る黒髪の険しい顔をした男だった。わずかに驚いているうちにシアンの腕がつかまれた。振り払おうとして驚く。
そんな、足音も聞こえなかったのに、何で甲冑が真後ろに。甲冑の下からくぐもった声が聞こえる。何か言った。だがそれが分かっただけで、シアンの意識は沈んだ。
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