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番外編・猫の神様の話2

2008.08.05 *Tue
ぼくたちの女神は人を愛した
女神は人間の男に誰よりも深い祝福とおもいをよせた
その約束と、おもいがぼくたちを生んだ
それが僕たちがケット・シー<幸運の猫>とよばれる理由
けれども不思議なことに、
誰もその男をしらない
古い、とても昔のことを知る長老たちは口をとざす
女神に愛された男は、どこへ行ったのだろう
想いをよせられた男は、
女神の祝福を受けなかったのだろうか
ぼくたちは人間だったけど、人ではない
ぼくたちは本当に女神の祝福を受けてこの姿になったのだろうか
それは、本当はなにかいけないことをした
罪であるからではないだろうか
もしくはとてもとても悲しいことをとざすための
3.

アリューノーマルがとうとう試験を受けることとなった。そしてアリュノーマルは水の試練を見事突破し、五体満足でただ一人、帰ってきた。これからアリューは天使に、女神になるための人生に総てを注ぐことになる。
僕は彼女の身体検査をする役目をおおせつかった。これは研究者側の密命という奴で、検査を受ける当の本人には知らせがいかない。僕はこそりとアリューを検査し研究するのだ。
そんなわけで、我が友アリュノーマルを待ってみると、意外とアリューは僕のもとへ来ない。アリューはひそひそと誰もいない時間や場所を避けて活動している。僕のところへは目を輝かせて遊びに来てくれるけれど。くるときにさりげない努力をしているらしいのも僕はちょっぴり知っていた。

「ケット・シー!」
はて、待ち人がやってきた。口ひげを上下させて僕はちょっと笑う。アリューは僕の胸にほお擦りして水の試練を受けたことを明るい声で教えてくれる。僕は本当は知っていたのだけれど、
「とうとう受けちゃったんだねぇ、よかったというべきなのかな」
と素直な気持ちをアリューに伝える。アリューは少し悲しそうな顔をしている気がするのだけれど、それでも笑顔を貼り付けてうんとこたえた。
研究なんて指示されたけど、僕自身はその対象としてアリューをみるつもりはさらさらなかった。彼女は僕の友達で、できれば辛い使命なんてしてほしくない。
試練をすべて消化したとき、その者は人間を捨てて新たな存在へと成り代わる。実はその、あまりにも厳しすぎる試練を乗り越えたものと僕は出会ったことがない。僕がこの塔へ来てから誰一人、天使にも神にもなっていないのだ。多くの天使候補生は短い人の人生を散らすばかり。
試練の間でさえ、死んでしまうかもしれない。
でも乗り越えたところで、自分の中の何かが死んでしまう。神になるということは己を殺すことと同じ。

「はい、アリューばんざーい」
一先ず僕はアリューを胸から引き剥がし、アリューに言ってみる。
「ばんざーい?」
アリューはつられて両手を挙げた。袖がめくれて両腕に鋭い刃物の傷が出来ていたのが見えた。
「む、アリュー君。君は怪我をしておられますにゃ。治療するのを忘れているのはだめですにゃ」
僕が口ひげを揺らしながら、っめとしかるとアリューはえへへと笑う。
「あ、あはは。試練の時はもっと体中痛くて怖くてだから…その帰ってきてすぐねむちゃって。起きたらすぐにこっち来ちゃってたわけで…ちりょうするのわすれてたんだよー」
へらへらとしているけれど、それは試練を受けるものとしては由々しきことだと僕は思う。―――というよりも、アリューがものすごく心配だ!
「そんなアリュー君はいたーいお薬塗り塗りですにゃね。僕はまちがって爪で引っかいてもアリューはないちゃだめなのですよ~」
僕は不器用なので前もって牽制しながらアリューに傷薬を塗り始める。もちろん同時に治癒魔法を唱えてもいるが、お薬も塗りながらのほうが効果が高い。
たまに間違って僕の爪がアリューに小さな傷を作ったけれど、それはあえて見ぬふり。

―――アリューは試練受けることになって、受けたくないといいはしなかった。彼女はもう、己で決心を抱いてしまっているのだろう。
だから僕は、アリューが元気に試練から帰ってこれるよう、例え無事かえれなくても傷ついた体を癒せるよう全力で支えてあげたいと思う。

悲しいこと、辛いことだとしか僕には思えない。
試練を受けるものは、何かとてもつもない希望の光りでも見ているのだろうか。

この道でしか生きていけない君は、一体何をおもって試練に挑んでいるんだろう。
悲しい運命だと、君は知っているはずじゃないか。

アリュノーマルは、今までに見たことのないほど傷だらけだった。擦り傷も、皮膚がぱっくり裂けたような傷も、やけどさえあった。
何より僕に見せた笑顔が、何よりなぜか胸に痛くて。僕はいつの間にかアリューうつむいたとき、どこか心の中でほっとしてその頭をなでた。アリューが僕に無言でしがみついて僕の胸がぬらした。僕は何も言わずそっとその小さな背を、なでてあげるしか出来なかった。

4。

今回の試練は、アリューはどうやらほぼ無装備で挑んだらしい。
僕はそのことに驚いて、疑問と不安がいっぱいになった。アリュノーマルの試練は、何かおかしい気がする。ふつう、試練は元老院からの召集状が来て、それで試練を受けるはずなのに、気が付いたら廃屋と化したお屋敷の中にいて試練が始まっていた?
そんなことがあるのだろうか。試練は、≪水の神殿≫と呼ばれる施設で始まるはずじゃないのか。少なくとも…僕が今まで聞いた話がちがう。一応試練の最後に水の神殿で合格とみなされたらしいけれど……。
僕はアリューにそのことについて、聞く気にはならなかった。きっとアリュー本人だって疑問と不安がいっぱいなはずだ。

あーさんにきいてみようか。女神って、女神になるってどういうことなんだろう。試練の内容が異なっても女神になれるんだろうか。誰も言わない神話のもっと詳しい話を、あーちゃんたちは教えてくれるだろうか。
アリューとであったときから、僕は物心のころからからくすぶっていた疑問が深く大きくなっていた。寝物語で僕たちはずっとアース・アナ≪猫の神≫の物語を耳にしてきていた。そして当人に会ちゃったのだからますますきになる。というか、あーちゃんが愛したって人間ってイーキスさんなのかな。女神が愛した人って、黒髪の美青年だったそうだけど。イーキスさんは美形って言うか、のほほんした雰囲気が強いから僕にはよくわからないけれど。
そうグダグダ考えていると、日が暮れて、僕はあわてて立ち上がった。聞かなきゃ分からないことを、考えてる場合じゃなかった。
僕はいつでもアリューが試練に挑めるような魔導機≪ギア≫を新たに製作することを先ほど決心したのだ。ギアはその規模は銃火器のような手持ちの武器から、身につける服、指輪などの装飾品など多岐にわたる加工方法があり機能もさまざまなものを付け加えることが出切る。ものによってはどこへでも持ち歩けるものも造ることが出切る。もちろん、その加工には高度な技術と発想、器用さも必要だけれど…。
珍しく自室の研究所から出て、ギアの研究を熱心にしている研究室に出かけた。いつもどこでもそうだけれど、研究者たちはみんな必死なので、最新の研究資料は、見られず、古いものか普遍的であまり価値がないと思われたものしか手に入らなかった。けれども両手に抱える以上のものが見つかったので僕はそれら資料をごっそり借りながら僕の研究室に猫あしでかける。不器用な僕がギア製作という細かな作業をすると思うと、正直先が思いやられるけれど、一先ず設計から、創り上げてみよう。
アリューが傷つくのを、少しでも減らしてあげたい。

「イーキス、アースはどうした」
不意に後ろから声がかかって僕は驚いて振り返る。女神や天使の候補たちや魔法の研究者たちが多い塔とはいえ妖精である僕を見れる人間は多くない。
振り向いた先にいたのは黒い髪に、黒い瞳の長身の整った顔立ちの青年だった。色彩的に、思わずイーキスさんを思い浮かべたのだけれど、イーキスさんは白っぽい服装をするけどこのひとは黒尽くめだし、イーキスさんの穏やかな雰囲気とは違って青年には何か威圧感のような張り詰めた空気があって思わずひげが持ち上がる。
「あなたは?」
小首を傾げると、青年は頭を左右に振った。
「すまない、人違いだ」
「あの、イーキスさんのお知り合いですか」
僕がと惑いがちに聞くと、青年はあさってのほうに足を向け、沈黙のまま去ろうとしたが、何を思ったか、振り返った。
「お前・・・アースが分かるか」
「あ、はい」
わかるけど、僕の質問に答えてくれないこの人は人の話を聞かない人なのだろうかと思う。
「あれは元気か」
でも有無言わさない雰囲気で、つい素直に僕は答えてしまう。
「げ・・・んきですよー、よく僕のところにも遊びに来てます」
「そうか」
そのまま青年は僕に背を向けた。
「俺はアースとイーキスの顔見知りだ。お前がイーキスに似ていたから、間違えた。すまなかった。では失礼する」
「あの、あなたの名前を聞いていいですか。二人が来たら、会ったって伝えますよ」
青年の数歩、進んだ足が止まった。
「……クレイヴ・アナだ」
最後は意外と礼儀正しい人だった。

クレイヴ・≪アナ≫?あーちゃんと同じ名前?
アナは特別な名前。僕たちケット・シーの故郷であり棲む世界の名前だ。それがあーちゃんの知り合いでその名前が付いているなんて偶然だろうか。アース・アナ≪アナの世界≫にはアース・アナ以外の多くの神が存在して、彼女を支えているという。僕はイーキスさんにしか出会ったことがないけれど。
女神が愛した男はどうなった?
神になった?それとも人間のまま死んでしまった?
人間の男は、女神になにかを与えることなんて出来た?
思い以外の何かを、彼は与えたのだろうか……。
……あの人は、神様?
あなたは、神様ですか?
僕は聞かなかった。

僕はアース・アナが女神になるまで、何があったのか。
女神になって何をしたのか。
神話が出切るまで誰も知らない何かを、ずっと知りたいと思ってた。

そして、その神話の中を生きて、今も生きている人たちと僕は出会ったのに、神話の事実を聞くことがなかったのは、相手が言いたがらなかったからだとばかりに思っていた。僕は事実を聞くことを恐れていたと。
でも、違うのかもと、今思った。
僕が知りたいと思ったのは、女神になるアリューがどうなるのか知りたかったから。でもアリューはあーちゃんじゃない。そして僕はイーキスさんでも、神話の男でもない。だから、僕は僕なりの方法を探してアリューはアリューのまだ分からない道を探して女神になるしかないんだとふと思った。

アリュノーマル。彼女は僕の初めて出来た大切な友人。
彼女は女神への道を行く。アース・アナがとおった同じ道を。そして違う道を。
これは、僕たちの物語。
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CATEGRY : 箱庭

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ガーン
続き…ないの??
2008/08/06(水) 02:09:29 | URL | 榛 #oJlZoyBU [Edit

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