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番外編・猫の神様の話1

2008.08.03 *Sun
むかしぼくたちは、悲しい定めの生き物だった
ある男は女神に救いを願い
女神はこたえ、ぼくたちを永久の世界に導いた

だがすべてはうまく行かず、魂たちはさまよい
女神は悲しみ、心を閉ざした

時が廻り、女神と男が総てを忘れた姿でめぐり会い恋をする
女神は男と芽生えた愛を知り、
今一度の救済を試みた

僕たちは生まれ変わり、
女神の祝福を受けた唯一の存在として世界にいまもいきている

それが僕たちの神話で
僕たちがケット・シー<幸運の命>と呼ばれる理由。

生きた女神が永遠の祝福を約束した、唯一の命なのだ。

僕はケット・シーと呼ばれる一族である。
本名は別にあるのだけれど、僕はこの場所で本名を挙げることはない。この塔という場所では本名で呼ぶことを禁忌としているのだ。いつからはじまったということでもないのだが、暗黙の了解としてそれは誰もが徹底している。この場所にはケット・シーの一族は僕だけしかいないから誰もが僕をケット・シーと呼ぶ。
僕は先ほどの実験で軽く溶けてしまった指先とひりひり痛む柔らかな肉きゅうを見つめる。
僕は生まれながらの深い知識力と長寿をみこまれここで魔法の研究機関で研究を行っているのだが、残念に今回は失敗してしまった。皮膚が少しばかり溶けてやけどしてしまったのだ。
ケット・シーとはどんな生き物かというと、まず一言で人間よりやや大きな身長の二足歩行をする猫といっても僕たちは過言ではない。頭はいい種族なのだが、いやはや。不器用な種族なのだ。

めんどうだな、とおもっていると口ひげと耳が動く。僕の研究している私室にお客さんが来たのだ。
「やっほりん、けーちゃん」
「こんにちは」

濃い青い髪と目をした10才くらいの人間の女の子と、耳と尻尾だけがねこな人間の青年二人だった。僕たちケット・シー一族が使える神であるアース・アナ様と、僕たちの始祖といわれているイーキス様である。
「こんにちはあーちゃん、イーキスさん」

アース・アナ様はあーさんとか、あーちゃんと呼ばれることを好むので、主神なのにアーちゃんと僕は呼んでいる。イーキス様も始祖であられるのに様づけはこそばいとおっしゃられるので仕方なくイーキスさんとお呼びさせていただいている。
本当はすごい人たちなのに、その人たちは僕の目の前にやってきてあーちゃんはまず僕に抱きついてほお擦りし、イーキスさんは慣れた様子で僕に苦笑をする。彼らは僕を友達という。嬉しくて不思議な気持ちをいつも抱く。
僕のお腹にすりすりと頬を寄せいていたアーちゃんが不意に僕の手をまじまじ見て、そしてお皿のように見開いた。
「いやー!けーちゃんに10円はげがっ」
あーちゃんがいきなりとてもショックだという表情で声を上げた。その所在はまさしく子供。・・・こう見えて僕のうん百倍以上を生きてるのだから、…やっぱり、不思議だ。
しかし10円はげとはずいぶんひどい言われようである。のみにだって気を配っているのに。

あーちゃんはぷんぷんおこっていた。

「誰よ、こんなことしたの。フルぼっこだ」
誰って、実験に使った液体Xである。しかし相手がマジなのでどうしようと思う。このひとはマジだ。この上なくマジだ。殴れそうもないものを殴れるだけの力もあるからすごい方だ。うーん、どうしよう。

「はーいはい、あーさん。まずさきにけーさんの治療しようね。アーさんはおちゃいれてきてねー」
困っているとイーキスさんが助けてくれた。あーちゃんはちょっとだけしょぼん。として、うんわかったたーとお茶お入れに行く。勝って知られている僕の部屋・・・ふいに、これがいつもそばにいる保護者・・・いやいやパートナーであるイーキスさんだったらどうするんだろうと思う。
殴るどころか抹殺とか消失とか言っちゃいそうに思える。
あーちゃんはまっすぐな気性なので、おもいこんだらまっしぐらなのだ。だから僕たちの始祖であり、ケット・シーたちの神であるイーキスがうける保護愛よりはずいぶん下なのだろうということを知っている。

たぶんイーキスさんは、普段から苦労してるんだろうなぁ。


<強制終了>



と、おもったらおかしいね、続きがあるのよ。




この塔で、僕にはもう一人友人がいる。銀色の輝きを持つ茶色の髪に翡翠のきれいな目をした女の子だ。彼女は僕と出会うとぱっと顔を輝かせ僕の胸にほお擦りをする。
「ケット・シー!」
その所在は僕のとても大切な人たちを思い出させて、苦笑を誘った。

彼女、アリュノーマルは天使候補に選ばれもしないことを思い悩んでいる少女だ。
彼女はもうすぐ16になるという。ここにきたのは9歳のときで、もう7年経とうとしている。それは選ばれたものがやってくるこの塔の中では異質な存在だ。この塔では世界の平穏を保存するためあらゆることが研究され、また活動を行っている。世界を守護する女神を人工的に作ろうとする試みさえ、その一つだ。
僕は、頭脳を求められここにいるが、彼女は女神になるためにここにいる。だが彼女は女神へなるための、そして更にその前段階の天使候補であるための試練にさえ選ばれない。本来なら、物心つく前に女神候補はやってきて10になる前に天使の試練をうける。それがないというのは、そこまで資質が育っていないかあるいは資質がないという証拠である。アリュノーマルは天使であるには年をとりすぎているのだ。
だから彼女についた名前は≪平凡(ノーマル)≫だった。

だが彼女は同時に、試練をひどく恐れている。試練の内容は命を落とす危険が非常に高いのだ。女神になることなく、天使の卵は多く散っていく。
だが試練を受けるのはアリュノーマルの使命であり、それを果たせないでいることをアリュノーマルは自分で責めて、悲しんでいる。
僕とはじめてであったとき、アリュノーマルはないていた。暗い影の中で、声を押し殺してないていた。
僕は彼女がとても可愛くて、大切で、そしてひどく悲しい子だと思った。女神を目指す多くの天使たちのように、彼女もまた平凡(ノーマル)といわれながらも塔の中の世界でしか、塔を中心に考えた生き方しかできない。

あるとき、たまたま居合わせたあーちゃんがいっていた。彼女は選ばれると。そして女神になってしまうだろうと。―――イーキスさんもどこか寂しそうに微笑んで。

いつかノーマルは選ばれるだろう。
それは、なんとなく僕でも分かる運命だ。
僕は人間で言うと妖精で、魔力がよほど高いものでないと識別できない元の生き物だ。そして僕は≪幸運の猫・ケット・シー≫僕に出会えるものは、決して多くなく、塔にいる天使候補でさえ僕を見つけられたものはいない。
出会った瞬間から、もしくはそれよりずっと前から、アリュノーマルはもう運命に選ばれている。

アリュノーマル君が試練を受ける日は遠くない。
そして時をえて、君は僕たちのように果てない世界を生きるだろう。

でも、でも。
彼女が笑ってくれていたらと、ねがわずにはいられない。
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2008/08/04(月) 00:25:52 | | # [Edit

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