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祈り子の夢3

2008.04.24 *Thu
ストックおわたヾ(・ε・。)

これで激おそ更新・・確実だね。
むしろ王国物語更新・・ってその前に紫紺かorz。


02-塔

あれから毎日シルヴィアは僕の元へ訪れるようになった。
巫女姫としての慈悲か、それとも異端者への興味か、真意はわからなかったものの。彼女は笑顔で僕の元へ訪れ、そのたびに彼女は持参したお茶をご馳走する。
その訪問はジンの数よりも多いこと、知らず人と会話することになれていない僕も彼女との会話が普通に進むようになり、彼女に心を許してしまいがちになるのを僕自身感じていた。そう、だから、その・・・・・・彼女が来る時間帯になると、こっそりお菓子を用意してしまう僕は、駄目じゃないと思う。彼女は僕のことを友達だと思いたいらしいけど、僕にとってお客さまなんだから。
そんなおり、シルヴィアは小首を傾げながら僕にふと、そして少し言い難そうに聞いてきたのだった。

「あの・・・アルマ?貴女はいつ部屋に帰るのでしょうか、私、いつも待っておりますのに、一度も戻ってきたことがないのですが・・・・・・・」
待っていたんだ・・・・・・。
この学園には、学生が宿泊する寮がある。先日、シルヴィアがわざわざ挨拶に来たように僕とシルヴィアは同じ寝室を共有するルームメイトということである。しかし僕は、寮の寝室を使っていなかった。僕は悲しいような、嬉しいような、なんともいえない気持ちでシルヴィアを見る。
僕を見るシルヴィアは心配そうに眉を歪ませ漆黒の瞳をうるませている。それは本当に真心のようなものであるような気がして、僕は一瞬包まれるような温かさと、背筋にはざわりとした悪寒を同時に感じた。
僕はシルヴィアから目を逸らし、宙を見ながら、答えを紡ぎ出す。
「えーっと、僕は寮には戻らないんだ。この塔は僕一人しか使わない分、生活に不自由はないし、研究を逐次進められるから、寮に戻る必要がなくて・・・・・・」
それは本当だ。事実僕の寮部屋は、僕の私物は一つもない。おまけに僕はここに日夜研究に励んでいるので、徹夜で練成を行う事もある。それが毎日の大半を占めているものだから寮のベッドに戻るより、ここの堅い床や椅子の上で寝てしまうほうが勝手が良いのだ。
そのぶん、不健康な生活だと、ジンには詰られてしまったのだけれど。

「まあ、そうですの・・・・・・残念ですわ。私、一緒に過ごせることを楽しみにしておりましたのに・・・・・・あ、でも、お着替えとかはどうしていますの??それに、ここには仮眠室もベッドもありませんわ??」
僕はそれを苦笑で返した。確かに、そのような便利なものはない。僕は曖昧に返してその会話を打ちきった。
それだけじゃないから。
本当は、僕はこの部屋から出ることができなかった。人の目が恐くて仕方がないから。寮の自室に戻ろうとすれば、多くの人の目に付いてしまう。皆が僕を、マナなしの娘だと、嘲笑する。僕という存在が嫌いだとか言うのではなく、僕がマナなしだから、脳なしだからと見下す無垢な悪意。仕方のないことだった。この学園は、総称で塔と呼ばれる魔術の研究機関だ。ここに集められる、我が物顔の貴族たちは、その資金源として存在しているが、その本領は、神という頂を目指し、さまざまな研究を行っている魔法使いたちの集まりなのだ。そしてそのような魔法使いは、己に秘めたマナに誇りを持っている。彼らは僕を奇異の目で見る。それは異物を見る冷たさで―――そんな目から、逃げたかった。どこまでも遠くへ、誰もいない場所へ。
しかし逃げることもまた出来ないのだった。学園の最高指導者である元老院の取り決めで、僕のことをこの“塔”に幽閉すると決まっているからだ。
期間は、無限。
何故そうなのか、僕にはわからない。気がつけば、僕はここにいた。元老院は絶対なのだと知っていた。そしてそれは、覆せないことなのだと、僕は何故だか身に染み込んで、知っていたのだ。
せめてもの思いに、僕はこの塔へと逃げ込んだ。この塔は、あるとき実験的に作られ、そして廃棄された塔だった。通称、幽閉の塔。この塔に入るものは、己のマナを封じる制約をしてはじめてはいることが出切る。それができないものは入ることは出来ない。僕は、己のマナを持たないから、制約する必要もない。悪戯好きな多くの学生も、ここへくることは出来ない。なぜならそういった、多くの学生は、己のマナを操るという高度な技術がないため、マナを封じるという芸当が出来ないからだ。

どの道、変る事のない日常。
シルヴィアが帰った後、僕は今日は実験をせず、読書に励んでいた。
集中してしまうと、不思議なことで、時間を忘れる。
一人の空間に、ペラッと捲る紙の音が、やけに大きく感じられた。

気がつけばあたりは暗く、もう闇一色に染まっている。開け放たれた窓から、風が入りこんでいた。
しっとりと冷たい夜風は僕の顔のをくすぶり通りすぎる。
僕は本を読むのを止めて、窓の向こう、星がちりばむ外の世界を僕は見た。空では赤い月の満月が空を彩っていた。
その下では、地平線の変わりに黒く佇む森が、そしてそのほんの少し手前からは草原が風に揺れて波を作り上げている。その光に照られさる、一つの影を僕は見つけた。それは全身を黒衣に見を包んだ人物で、その人物は、僕に背を向けて草原の真中に座り込むと、頭を覆っていた布をするっと解く。黒の布のしたから、白く輝く白銀の髪が見えた。顔までは見ることが出来ないけれど、僕はそれが誰だか知っていた。

僕はその人物をただ見つめた。
すると、暫らくしてその人物が不意に僕の方を仰ぎ見た・・・・・・気がした。

青の瞳を、見止める。

そして彼は僕から目を逸らし、空をまた見上げるのだ。僕もまた、つられるように空を見上げる。
どうしてこんなに遠いのだろうと思うことがある。
決して遠くはない、手を伸ばせば届くのかもしれない。

けれどそんなことが出来るはずがない。
ただこの距離が、とても哀しい。


忘却の中にある夢の中に、その少年はよく出てくる。
光に満ちた花畑で、少年といろんな話をして、花冠を作りあった。少年は気がついたらいつの間にか隣にいて、僕に笑みを向ける。少年はとてもやさしくて、元気で。僕は彼が大好きだった。
でもそれは、僕の記憶ではない、僕の記憶が始まったときよりも、なぜならその少年はずっと幼かったから。
彼じゃ、ない。

「むかしむかし、塔に閉じ込められたお姫様がいました―――」

でも悲しい、何でこんなに遠くにいるのだろうと。出れるはずもないのに、この塔から出て、彼のもとへ駆け出したいとなぜか僕は思ってしまう。
彼にはいい迷惑だ、マナなしの、こんなみすぼらしい僕に、ずっと見られているなんて。

遠い少年の幼い声が耳元を霞めた。その声を思い出して、僕は少し泣いてしまったのだった。
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2008/04/25(金) 03:00:34 | | # [Edit

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