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祈り子の夢2

2008.04.18 *Fri
だい2だんー
さくさくっとここまではあるのさー
01-通信販売

目の前には奴がいる。
ニコニコと、否ニヤニヤと楽しげに笑う奴がいる。
僕ははあと溜息をつく。

「―――で?その後どうなったの??」
そしてうう、と僕、――アルマレス・ルシェは言葉に詰まった。目前の、それも人の研究室の人の椅子を勝手に陣取ってこちらに向けてる好奇の眼は明らかでつき返す気力もない。
ただでさえ気力の減る実験をしているところなのにっ!
ジェリアン・ナーファー(愛称ジンというらしい)はこともなげに黄金の瞳を輝かせて笑っている。
不思議・…変な人だ。
年で言うと僕より二つばかり年上で、この学院に留学して魔法物理学――錬魔術を学びにここへ来たらしいのだが。僕自身が言うのはなんだが、普通の研究員と言うか生徒って、自分の研究を人の眼に見られるのを嫌うらしいのによく嬉々と遊びに来る。
ただ僕自身に関してはそれは例外なのだけど。
不思議に思って聞いて見ると、僕は郷里にいる友人に似てるだとかなんとかで目が離せないらしく、僕はそんな誰かのおかげでジンとの友好関係が続いているだが・・・。

僕は決してジンが嫌いではない。
むしろここでは唯一まともに会話できる人物と言っても良い。
確かに僕には大切な人であるとは認める。
そう認める。
けど

「邪魔・・・・・・」
僕は思わず呟いた。その目前では悪魔の笑み宜しくジンはやはり笑顔だ。多分わざとそうしている。
「そう邪険に言って話し逸らさない。で、君の新しい友達とはその後どうなったの?」
「友達じゃないよ」
冷たく言って僕は目の前のフラスコに集中する。心なしか、フラスコが僅かに震えているけれど。張り詰めた緊張が僕を縛る。
はあ、と息をついて、肩を揺らしても体はほぐれない。
「大体有り得ないんだよ。僕に”友達になろうだなんて”、」
自分を自嘲する思いが溢れ出る。
「だって僕は孤児だ。彼女も確かに教会の出ではあるけど、身分が違いすぎる。彼女は、巫女姫様だ。幾ら慈悲深いったって、僕なんかと喜んで友人になりたがるはずないよ」
シルヴィアは、アル・マナ教の中で聖女の資質を持った巫女姫であるとどこからともかく聞いた。聖女とは、かつて神の子とよばれていたアル・マナ教の教祖、アル・マナのように、奇跡の術を持った存在をさす。生まれながらに、空のように高くて遠くにいるようなひとなのだ。
そして、孤児だとか平民をイタブルこの手の迫害や軽蔑は、アル・マナ教を崇める権力者の子女の多いこの学園では全然珍しくもないことだ。さすがにこの学園内で、貴族を優遇する制度はなかったが、貴族が我が物顔で家の権力を振るうことは日常茶飯事と言ってもいい。
ジンは、―――確か平民の出らしいが外から来た人間だ。外から来た人間もそれなりに洗礼を受けているはずなのだけれどひょうひょうと彼女はそ知らぬ風を貫き通している。僕はそれがとてもまぶしくて、ジンに何時も心のどこかで憧れを抱かずにはいられない。
僕は、この居城(へや)から、抜け出る事は出来ないから。

「ばかだなぁ」
軽い嘲笑が僕の耳をうった。
「え?」
「だって、そう言うのって馬鹿じゃない。それにアルマって、結構優秀じゃん。アイデアパクってもきれたりしないし。前の論文かなりパクってランクSなんてもらっちゃったけど。」
あっはっは、と手を振りながらジンは言った。僕は素直に、それは本人の前では普通は言わないんじゃないのかな、と思った。それに、
「一応あれ読んだけど、あれって君が言うようなパクリ要素はなかったよ?」
ランクSをもらった直後に、自慢しに彼女は僕のところへ態々やってきたのだ。それを読め読めと押し付けられて、嫌だなぁと思いながらも読んだのだけれど。結果は、悔しい事にかなり面白かった。僕はそれ以上の感情は全くなくて、うーん、ジンってイイなぁと素直に思ったところで終わっている。憧れこそあれ、今更パクリと言われると、少しショックではあったがジンの文面は、何と無くジンらしくて、僕は結局好きになっていただろうと思う。
どこを真似られたか、さっぱりわからなかったし。

憧れの眼差しでジンを見ていると、不意に心に影が刺した。それはとても自然に、僕があえて出さずにいた答えが傾いてきた。
(―――でもね、僕は"マナ"なしなんだ。)
恐らくそれを僕は声に出す勇気はない。おもっても、いえるわけがない。こんな異端を、誰かに言われるだけでなく、自分で認めることさえ、とても痛いことなのだから。
世界には、空気と同じようにマナという魔法要素が存在している。万物にも宿るそれは、魔力と称され、魔力を強くもつ獣や植物は"魔獣"、"魔草"と称されている。そして、そのようなものに、自らの魔力を織り交ぜ、また調合などして新たなものを創り出すのが僕のやっている錬魔術だった。けれど、僕は魔力を全く持っていない。ゆえに、魔力を使わない錬金術しか研究できなし・・・・・獣や、草以下と笑われる事は少なくなかった。
「ふーん。ま、いいや。そうそう、この前頼まれていた事なんだけど」
不意にジンは話題を変えた。そのことに少し救われながら僕は、ああ、と思う。
「聖水のこと?どうだった?やっぱり、駄目だったかな・・・・・・」
ジン名義で、ついこの前僕が生成した聖水を売ってもらったのだ。この学園では生徒が作った試作品を登録して、教授の審査を受けた後に通信販売が出切るようになっている。聖水は、本来僕では作れないはずのものだったため、僕が仮登録の申請をしても教授は見るより先にそれを却下されてしまっていた。けれど、この頃は、そういう物をジンに頼んでこっそり売ってもらっているのである。
するとジンは軽く頭をかいて苦笑した。
「いや。それなんだけど、査定してたときかなり質がよかったらしいよ。教授がにかなり褒められてさ、正直これじゃああたしが作ったの出せないじゃんっ恨むぞおらとか思ったもん」
「う、ごめん・・・」
本の一瞬浮上した気持ちが、後半の言葉であっという間に降下する。
「いや別に、ぶっちゃけあれは作って売る気なかったから別に良いんだけど。替わりに君の造った在庫の聖水使い放題だし、報酬の1割もらえるし。
他にあったら、売ってあげるけど?他に何か余っているやつとかないの?」
僕は結局調合するのを止めて試薬を置いた後、えーっと、と考えた。

「試すに試せないので・・・・ほれ薬かな…」
作ってはみたものの、処理にとても困っている。

「うわぁ、それまた面白いものを…あ、ねえ、それあたしにくれない?」
「えっ」
僕はまじまじとジンを見た。女性にしては短く刈りこんだ髪だとか、普段の少年のような服装から、僕は、ジンがこんなものを使うのかと不思議な衝撃を受けた。僕の視線を思いきり受けたジンは意味が通じたのか、違う違うと手をひらひら振る。
「あたしじゃないって、あたしの友達に使ってもらうの」
(使うような友人って・・・・・・・・・・・)
僕はそれを言えずに飲みこむ。するとジンは更に違う違うと笑って、
「いやね、この前届いた手紙に、遺跡に行った時に罠にはまって、プロポーズされたどうしようって書いてあって、これは面白いからそのほれ薬を試して、真意を偽るというか、あわよくばそんな心捨てなさいって言おうと思っさー」

あの、それ邪道!?
吃驚してジンを見た僕は彼女がエヘと笑ったので、どうしよう、どうしようと心の中で、戸惑う。渡してはいけないとまず思った。けれど、何故か渡さなくてはいけないような、威圧がジンから放たれていて怖い。
どくどく、と鼓動が高鳴った。
その時、

コンコン。

本来ジンしかいない来訪者の音が、ドアから聞こえた。僕はまさかと思う。
「はい・・・・・・」
さっきとは違う鼓動を高鳴らせて、小心になっていく胸に手をあてた先で、黒曜石の瞳と髪を持つ巫女姫は、優しく笑った。
「今日は、お茶をご一緒しても良いかしら?」
彼女は、整った小さな顔を、可愛らしく掲げながら、その手に持つ茶器を持ち上げてかるく示したのだった 。

余談だが、その後僕はジンから薬を死守することは出来なかった。
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2008/04/19(土) 03:02:29 | | # [Edit

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